きこえてきたこと

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ミロ のおもいで

 睡眠導入剤を飲んでいて困ったことがひとつある。

 副作用で味覚障害で何でも苦く感じてしまう。水すらも。そしてわたしの大好きな牛乳。これがどうしても変な味になってしまうのだ。つらすぎる。

 でも飲みたい。できる限り美味しく飲みたい。そこで、甘みを足すとましになる。でも甘すぎるのもなあ。と思ってスーパーで見かけた『ミロ』。強い子ミロ。これだ。これしかない。

 冷たい牛乳ですぐ飲みたいところだけど、ちゃんと少量のお湯で溶かしてから牛乳をいれる。クルクルかき回す。ミロのできあがり。カロリーを気にしたら豆乳とかがいいのだと思うけど、牛乳がいいんだ。

 

 おいしい。

 ああ、麦芽の風味が苦みを打ち消して牛乳感を味わえる。よかった。

 

 思い出した。

 わたしが幼稚園の時、おばあちゃんとおかあさんが買物に行って、おじいちゃんとわたしと弟でお留守番になった。今思うと非常に危険なメンバーだ。まだ3才くらいの弟が、「ミロ飲みたい」とだだこねだした。わたしも幼稚園生。ミロ作ってやろうという気になる。おじいちゃんに許可を求めたらいいといわれて、とりあえずグラスに分量通りのミロを入れる。粉をたべたい。ダイレクトに食べたい。その衝動を抑えながら。

 そして重大なことに気がついた。

 牛乳がない。

 そもそもおばあちゃんとおかあさんは買いに行っているのだ・・・。

 どうしようとおもったら、めったに台所に来ないおじいちゃんが心配してきた。おじいちゃんに牛乳がないという旨を伝えると、黙って冷蔵庫から三ツ矢サイダーの瓶を取り出し、ぷしゅっと開けて、おもむろにミロの粉の入ったグラスに注いだ。

 三ツ矢サイダーは大好きだ。今も大好きだ。

 ミロも大好きだ。

 このふたつのマリアージュ。大好きなふたつがグラスの中で溶け合う…というか、今もまぶたの裏に浮かぶシュワシュワシュワと発砲する茶色い液体。おじいちゃんは入れる速度を緩めたがシュワシュワシュワしている。

 若干落ち着いたところでおじいちゃんが「まぜてのまれ」といって去っていた。

 わたしはとりあえずまぜてみたけど、子供の目にも全然まざってなかった。ざりざりしているような感じ。

 弟が飲むといいだす。まあいいか。と思って飲んだら泣き出した。

「ミロがおいしくない!!!!」

 わたしも飲んでみた。なんともいえないものだった。いまでも思い出す。

 買物から帰ってきたおかあさんが異変に気づく。

「何これ!!!???」

 一瞬わたしに疑惑の目が向けられたが、弟が「おじいちゃんがさいだーいれたー」といったので救われた。

 とりあえず、あんなものはあれ以来口にしたことがない。大好きなもの同士を混ぜてもいい結果になるとは限らないということを学んだあの日。