『護られなかった者たちへ』中山 七里
ずっとアンリミテッドしたままで読んでいなかったのを気分転換にと読み始めた。
前知識なし。
ミステリ、サスペンス(って今もいうのかな)は母親が見てた火サスぶりなのだけど、ぐんぐん引き込まれた。
社会保障(生活保護)の闇を中心にしたお話なのだけど、わたしの中のいろいろな自分のペルソナがうるさく意見を言い合ってしまった。
ネタバレを避ける。
人間的にゆるせないことをしたから、その人がどんなに他の人に対して善人であっても死に値するということを決めるのは自分。全部自分なんだ。いいもわるいも全部自分。法律じゃない。
この物語は、主人公の勝久に感情移入をしていくことによって彼の善悪の判断に引っぱられる。それは彼に関わる登場人物もみんな引っぱられている。彼はいいやつなのだ。人間が相対したときに感じる「この人はいい人」というものを感じさせるのだろうな。
読み終わって思うのは、この小説よかったというのは簡単なんだけど、それでいいのかという気持ち。たまたまわたし自身を含めてこのような生活に直面している人が周りにいない。だから上から目線で、この苦しみをなくさなければ!と読後感で語るだけでいいのかというなんとも言えない罪悪感が自分の中から染み出てくる。わたしも、殺されてしかるべき一人だったのだ。
単純によかった!とか「感想」を言えない。