きこえてきたこと

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『グリーンブック』 こんなきれいな終りでいいんだろうか

 ヴィゴ・モーテンセン。わたしのなかではアラゴルン。『ロード・オブ・ザ・リング』での主役の一人を演じていた彼の新しい姿を見た。

 『グリーンブック』 ピーター・ファレリー監督

  人種差別をなんとも思わない時代のイタリア系アメリカ人、トニーをヴィゴが演じる。黒人ピアニストの差別地域である南部のツアーの運転手兼用心棒をお金に釣られて引き受ける。

 黒人であること、(おそらく)同性愛者であることの差別を受けるドク。トニーは仕事だと割り切っていたけれども彼のピアノの才能とおそらく真面目さ(自分にないものって惹かれるよね)誠実さ、内面に持つものに心を寄せていく。

 ドクが雨の中、叫ぶシーンがある。自分は独りぼっち(意訳)だと。ドクはやっぱりお金持ちだから差別的なシーンがあっても、「まあそうはいっても君は恵まれている」と見る側はどこか思っている。でも人間の孤独というのは持っている財産や環境で他人が計り知ることなんてできないんだ。勝手に相手を判断する自分に気がつく。世間と比べて他人と比べて自分と比べてあなたはまだ大丈夫じゃないかと。

 最期はいわゆる大団円で終わる。差別的なイタリア人の家族がドクをクリスマスパーティーに受け入れて。 

 わたしがひどい人間なのかな。トニーとドクの間はそれでいいだろう。果たしてトニーの父親や他の家族はどうなんだろう。こんなきれいな終りでいいのかという思いがわき上がる。ほんとうのところはわからないな。でもいい映画だった。すごく。

 人間のどす黒い差別意識をむき出しにするものではないけれど、それとなく見る人を考えさせるシーンがたくさんあった。見る人が考えたらそれで成功なのかもしれない。

 映像美も映画も音楽も、いい映画だと思う。