きこえてきたこと

哲学、読書、文学、宗教、映画、日々のこと。

かなしみ

 かなしさの比較ってできないね。

 同じことが起こるということがありえない。

 例えば、親が死ぬというのはほとんどの人が自覚的経験をすることだと思う。まあ、親がわからない人、赤ちゃんの時に亡くなった人、自分が親より先に死んだ人は対象外だけど。でもその親との関係性なんて、まったく同じ人なんて世界に一人としていない。だからその親が亡くなった時のかなしみだって、同じだなんて言えないと思う。近い共感はあるかもしれない。でもその関係性によってまったく違う事も多いだろう。

 

 わたしはかなしむ人にいつも上手く言葉が掛けられない。だって絶対そのかなしさがわからないから。だから自分も他人に分かち合うことをしたいと思わない。ただ、自分一人の世界でそれぞれがその世界の中でかなしいということだけはわかる。そこでしか共感できない。

 上手く言葉がかけられない。

 抱きしめることもなく(わたしじゃない方がいいかもしれないから)、手を取ることもなく(わたしじゃない方がいいかもしれないから)、ずっと「かなしいね」って近くにいることしかできない。でも、「かなしいね」って思うことはずっとしている。