きこえてきたこと

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『つばさ』 アカデミー第一回受賞作品

 

 わたしは映画の好みが偏りがちな気がしているので、歴代アカデミー賞の受賞作品をAmazon Primeで見てみることにした。

 アカデミー第一回受賞作品。サイレント映画。正直途中で飽きるだろうと思ったのだけれど、引きこまれる。メリー役のクララ・ボウの愛嬌の中にある女性の哀しさのようなものにとてもひかれる。

 いまの映画技術からしたらとんでもなく幼稚な飛行機の空中戦の映像だと思うけれど、これが作製されたのが1927年だと思うとすごいとしか言いようがない。

 実の母との結構濃厚な別れのキスとか、上官からの祝福のキスとか、今の感覚だとちょっとえ????となることもある。

 戦争映画なのだけれど、通底するのはコミカルで明るい要素。これはいわば戦時中の映画。映画は娯楽でなくてはならない。だから戦争映画であっても暗く落込むものではないのだろう。モノクロだけど血を吐いて死んでいくシーンもある。それもドラマチックというよりは流れるシーンのひとつとして。

 クララ・ボウが気になって調べてみたら、かなり辛い家庭環境から美人コンテストで芸能界に入った苦労人の方。スポットライトを浴びるようになってからもいろいろあって、スキャンダルの後に銀幕から姿を消していた。

 ああ、この映画に出ている人たちはもういまここにいないのだろうな。いまは2021年。その人たちの表情、演技に魅了されているわたし。時を超えて心を揺さぶられているわたしがここにいる不思議。