きこえてきたこと

哲学、読書、文学、宗教、映画、日々のこと。

『ハーモニー』伊藤計劃

 

 『虐殺器官』に続いてこちらも。健康が全て管理された世界。生きる、老いる苦しみがとてもとても縮小されている。その価値観に驚かされる。

 身体に悪いことを取り締まり、心が乱されればすぐにカウンセリングプログラムを受ける。うーん。これ、実は遠い未来じゃないかも。なんかそんな気がする。

 人の死への向き合い方、それを選択できない。価値観だよなあ。これ。今生きている世界の価値観をがくんがくんに揺さぶりに来ている。その中で安全に生きるということが保証された世界でそれが突き崩されることで一層「死」というものをどう捉えるか、命といってもいいな。それを浮き上がらせてくる感じがする。人間の底の部分をガタガタいわすやつだ。

 こんなすごい作品を書かれた方が早逝されたのは本当に残念。