おもしろかった!!!
前に読んだ哲学系の本の中に出てきたおすすめの一冊でリストにあったので読んでみた。あらすじも知らず。
浮かび上がる情景は華々しくて豪華で美しい…耽美な世界。そして誰もが目を奪われる美しい青年、ドリアン・グレイ。いつも読んでいる本と全然違う感じでとまどったけど、イギリス上流階級の生活、ウィットに富んだ会話に惹きつけられた!めんどくさいイギリス人な感じ!!
ドリアンの美しさを全身全霊を傾けて肖像画にしたバジル。そしてドリアンに「君は自由に生きるべきだと」新たな生き方に目覚めさせる言葉を投げかけるヘンリー。
長編だけどテンポがよくてどんどん「事件」が起きていく。
ストーリーはネタバレしないように。
結局このお話は、仏教的な「生老病死」、具体的には「病」はないけれどそういうことを自分につきつけてくる物語だ。ドリアンという青年を通して自分の中にある「生老病死」を考えさせられる。ドリアンの美しく残酷な心情吐露を通して、「自分の中にもそれがある」ということをなぞられているようでぞくぞくするのだ。ひりひりするのだ。そして逃れられない「自分」、煩悩。
著者のオスカー・ワイルドは当時同性愛の罪で身を持ち崩す。直接的ではないが、この小説の中にはどこか同性愛の関係性があることを感じないでもない。そういうことも読み手が感じたままに受け取ればいいのかと思う。
ネタバレしないようにキーワードでいうとこの「絵」と書かれた人間の関係性については、この間読んだ『三体Ⅲ』にも出てきたモチーフであり、元ネタはこれかも!と思ってしまった。
ひそかにこの光文社古典新訳文庫はすごいのではないかと思っている。いくつか読んだけど、今のわたしが読みやすい。変に古めかしい表現じゃないので。こういうので古典文学を読み直す人が増えるのはいいことだと思う。