きこえてきたこと

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『月と六ペンス』を読んだ

 前に『雨』という作品を読んで気になってて、さらに『月と六ペンス』っていうタイトルが気になってて、この名前のカフェがあるのを知って・・・読んだ。 

 最初、架空と思われる画家について誰もが知っているかのように語られるところがああ、そういうイントロダクションなのねと思いながらも退屈かなあと感じたその後からもう止まらない。

 軽くないようをネタバレしておくと、主人公はゴーギャンがモデルとなっている出奔して画家となった男。それをその男の知り合いの視点から物語は綴られている。

 非常に不思議な話で、そこに某かの教訓や意味を見いだすことが難しい。それなのにものすごく惹かれる。これは一体何だろうというのを読んだ後に考えた。

 それは主人公が描こうとしていたものをこの小説自身がことばで現わそうとしているからかなと思う。わたしたちは主人公の男が最期に描いた絵をみることができない。でもそこにいたる道程は第三者的な男の視点で追跡することが出来る。この不思議さ。男の絵がどのようなものであったのかを文字で追った結果で感じているのかもしれない。

 なんとも言えない読後感。これはすごいなと思った。『雨』もいいから読んでみて欲しい。